2016年01月09日
事業承継と税理士試験の勉強
税理士事務所 求人・採用情報の
税理士法人TOTAL 高橋寿克です。
年末年始にできなかった大掃除を今日になってしました。
ちょっとした運動になって気持ちいい汗をかきました。
ご飯がおいしくてますます太って…(冷や汗ですかね)
今年もよろしくお願いします。
ご質問はここをクリック
たいこ 様からのお問合せです。
■年齢 40才
■性別 男
■資格 日商簿記2級
■職歴 業種:JAグループ
職種:監査業務、会計税務支援
■学歴 地方国立大学卒
■会計事務所経験 なし
■居住地 中核市
お世話になります。たいこと申します。ちょっとイレギュラーな質問ですが、回答いただけたらと思います。
実家は小規模な会社(法人で従業員数10人未満)を経営(運輸、不動産を中心とした多角的経営)をしており、将来(親のリタイア後5年先くらい)は跡を継ごうと考えています。業況は厳しいものの、経営は安定しています。
私は、零細企業の経営者は、相当の税務知識を有していたほうが望ましいと考えています。現在、仕事で会計税務に関わっていることもあり、9月から専門学校の映像講座で消費税法を学習したところ、試験勉強がそのまま実務に直結していると実感しているところです。今後、1年に1税法(法人税、所得税、相続税)税理士試験を活用してスキルアップしていこうと考えています。
ただし、知り合いの会計事務所に相談したしたところ、「やめといた方がいい。優秀な経営者に相当の税務知識がある者はいない。税務はすべて会計事務所に任せておくべきだ」と一蹴されてしまいました。
Q.
やはり経営者に、相当の税務知識(税理士試験B判定以上?)は必要ないものでしょうか。
5年もの時間があれば、別分野のスキルアップをした方がよいのでしょうか。意見をいただけたらと存じます。
A.
ご質問はこのサイトの趣旨である「税理士事務所の就職」には直接には関係ないのですが、
税理士は、単なる税金の計算屋ではなく、お客様の経営に関する相談相手であることが強く求められているので、税理士と「経営」という点を含めて書いてみます。
たいこ様は、JAグループで、監査業務・会計税務支援とのことですから、おそらく臨税ではなく、農業協同組合監査士(農協監査士)又はその補助者として単位農協を監査しておられるのですよね。
(1)農協監査
従来、全国農業協同組合中央会(全中)は、単位農協(単位JA)に対して独占的に監査権を有していました。
萬歳章会長の全中が、TPPに全面的に反対し、単位農協を通じて国会議員を攻めるに至り、安倍政権は、全中を「抵抗勢力」と判断しました。
全面戦争の結果は全中の完敗で、全中の単位農協への力の源泉とみられた監査権は農協改革で昨年廃止が決定され、JA全国監査機構を分離し、将来は公認会計士法に従い新たな監査法人を作り独立することになりました
(もっとも、他に代替する監査法人がどれだけ出てくるかは疑問ではありますが)。
萬歳会長は辞任し、TPPは国内では大きな反対はなくなり、昨年秋に参加国で大筋合意に達しました。
(2)臨税
本来、税理士にしか認められていない確定申告等の税務書類作成・税務相談の対応を、JA職員は例外的に2か月間「無報酬」で行うことが認められています(税理士法50条)。これを「臨時税理士(臨税)」制度といいます。かなり批判がある制度ですが、農家の確定申告を滞りなく行えるよう、今も認められています。
=============
私の父は、市川市農協(単位JA)の理事を長く勤め、農協のナンバー2にまでさせていただきましたが、吸収合併された「中核市」の船橋市の農協出身でありトップの組合長にはなれず、定年で昨年春退職しました。
そう言えば、在任中は財務諸表の見方を勉強していましたね。
両親は、今も毎日畑に出ており、現役バリバリの農家です。
=============
経営者にとって、会計データが見れることは重要ですが、たいこ様は農協監査を行っているとしたら、会計数値・税務に関する「相当の」知識や経験はすでに十分お持ちなのではないかと思います。
税務の勉強をすることは悪いことではありませんが、
腕が立つ税理士をきちんと選んで(これは結構難しいですが)、他のことに頭脳を使った方が個人的には事業承継に有用だと思います。
私たちプロの税理士でも、毎年の税制改正を確実に押さえて高いレベルで仕事をするのは簡単ではありません。税理士でも個人事務所で一人でやっている方は、独立して10年もすると(コミュニケーションのレベルは上がっても)、税務知識のアップデートはつらくなってきます。
口だけ、営業力だけで仕事をしていたら専門家としては終わりです。
=============
税理士法人TOTALでは、有資格者には税制改正大綱を読むように勧めています。また、税制改正他の社内研修も行っています。講師は私か、専門学校の講師出身者が多いですね。
=============
逆に、経営者の税法の勉強は、自社に関係する税制やその改正を軽く押さえて顧問税理士に確認するくらいで良いと思います(餅は餅屋です)。
税理士試験の法人税法、所得税法、相続税法のB以上は、税理士事務所の職員が一年苦労してやっととっているのが実情です。
そんなに簡単ではありませんし、40代のたいこ様が簡単に1年に1税法こなしたら、将来のキャリアのために頑張っている他の税理士試験受験生がかわいそうかな。
実家の運輸・不動産業務の業務に関しては瞬時に判断できるよう知識は正確かつ大量に必要です。
営業スタイルも、信用がある大企業と、自分で信用を作らないといけない中小企業では異なります。親から引き継げるものとそうでないものがあります。人脈でいくのか仕組みで行くのか、組み合わせたり新たに作ったり。
また、大きな組織と、中小企業では、部下との関係も異なります。会社の従業員さんとの人間関係は一朝一夕にできるものではありません。早めに付き合い始める必要があります。
中小企業では組織に対する求心力が働いていませんし、大企業ほど人のレベルが安定していません。それに合わせた採用・教育・管理が必要になります。これだって知識や技術が要ります。
農協「監査」と「経営」で最も違うのは、
農協「監査」は、基準・ルールが決まっていて、それに合っているかどうかを確かめるのが仕事になります。「答え」があらかじめ決まっているのです。
これに対して、「経営」は、答えが決まっていません。答えは一つなのか、複数あるか、もっといい答えがあるか、そもそも一つもないのか…、
情報を集め、仮説を立て、価値判断し、実行し、検証する
これを繰り返し、繰り返し行うことになります。
この価値判断をした経験の蓄積が経営者の力になります。
大きな組織の監査では、この辺の感覚はあまり磨かれません。
=============
税理士法人TOTALには、監査経験が豊富な本部長(公認会計士)がいますが、外から監査するのと中で経営するのは大違いで、経験や知識が不足してストレスも多く苦労しつつ頑張ってくれています。
=============
父に経営判断の方法を教えてもらい、場合によってはその一部でもやらせてもらう。
今すぐこれを始めていいのではないでしょうか。
それはもうやっているというなら、
事業承継を早めて、新たに新規事業を起こして実際に経営を始めてもいいように思います。
40才という年齢は、決して事業承継を始めるのに早い年齢ではありません。
それでも、5年の時間があれば、きちんと事業を承継をするのに十分な時間かもしれません。
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日本の社会全体に高齢化は進み、中小企業も事業承継は重要になってきています。
税理士法人TOTALでも、事業承継関連のサービスは需要が増えています。
お子さん(後継者)が30才前後になるとスタートし、40代前半にはだいたい完了します。
そう言えば、会計業界でも所長の高齢化・事業承継も進み、税理士法人TOTALでも、4つの会計事務所が合流してくれています。これも知識や経験が必要で私もやっとわかってきたところです。
機会があれば引き続きチャレンジします。譲渡希望の所長税理士さんがおられましたらご連絡ください。ていねいに対応させていただきます。
また、税理士法人TOTALの各本部長(店長)には、経営者として価値判断を行ってもらっています。
大変ですが頑張ってくれているので最近はだいぶ助かっています。
本部長税理士はこの経験を活かして、たくさんの社長の良き相談相手になってくれています。
今頑張ってくれている本部長、そしてこれからなる本部長の中から、私自身の後継者も育成しないといけないのでしょう。
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税理士法人TOTAL 高橋寿克です。
年末年始にできなかった大掃除を今日になってしました。
ちょっとした運動になって気持ちいい汗をかきました。
ご飯がおいしくてますます太って…(冷や汗ですかね)
今年もよろしくお願いします。
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たいこ 様からのお問合せです。
■年齢 40才
■性別 男
■資格 日商簿記2級
■職歴 業種:JAグループ
職種:監査業務、会計税務支援
■学歴 地方国立大学卒
■会計事務所経験 なし
■居住地 中核市
お世話になります。たいこと申します。ちょっとイレギュラーな質問ですが、回答いただけたらと思います。
実家は小規模な会社(法人で従業員数10人未満)を経営(運輸、不動産を中心とした多角的経営)をしており、将来(親のリタイア後5年先くらい)は跡を継ごうと考えています。業況は厳しいものの、経営は安定しています。
私は、零細企業の経営者は、相当の税務知識を有していたほうが望ましいと考えています。現在、仕事で会計税務に関わっていることもあり、9月から専門学校の映像講座で消費税法を学習したところ、試験勉強がそのまま実務に直結していると実感しているところです。今後、1年に1税法(法人税、所得税、相続税)税理士試験を活用してスキルアップしていこうと考えています。
ただし、知り合いの会計事務所に相談したしたところ、「やめといた方がいい。優秀な経営者に相当の税務知識がある者はいない。税務はすべて会計事務所に任せておくべきだ」と一蹴されてしまいました。
Q.
やはり経営者に、相当の税務知識(税理士試験B判定以上?)は必要ないものでしょうか。
5年もの時間があれば、別分野のスキルアップをした方がよいのでしょうか。意見をいただけたらと存じます。
A.
ご質問はこのサイトの趣旨である「税理士事務所の就職」には直接には関係ないのですが、
税理士は、単なる税金の計算屋ではなく、お客様の経営に関する相談相手であることが強く求められているので、税理士と「経営」という点を含めて書いてみます。
たいこ様は、JAグループで、監査業務・会計税務支援とのことですから、おそらく臨税ではなく、農業協同組合監査士(農協監査士)又はその補助者として単位農協を監査しておられるのですよね。
(1)農協監査
従来、全国農業協同組合中央会(全中)は、単位農協(単位JA)に対して独占的に監査権を有していました。
萬歳章会長の全中が、TPPに全面的に反対し、単位農協を通じて国会議員を攻めるに至り、安倍政権は、全中を「抵抗勢力」と判断しました。
全面戦争の結果は全中の完敗で、全中の単位農協への力の源泉とみられた監査権は農協改革で昨年廃止が決定され、JA全国監査機構を分離し、将来は公認会計士法に従い新たな監査法人を作り独立することになりました
(もっとも、他に代替する監査法人がどれだけ出てくるかは疑問ではありますが)。
萬歳会長は辞任し、TPPは国内では大きな反対はなくなり、昨年秋に参加国で大筋合意に達しました。
(2)臨税
本来、税理士にしか認められていない確定申告等の税務書類作成・税務相談の対応を、JA職員は例外的に2か月間「無報酬」で行うことが認められています(税理士法50条)。これを「臨時税理士(臨税)」制度といいます。かなり批判がある制度ですが、農家の確定申告を滞りなく行えるよう、今も認められています。
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私の父は、市川市農協(単位JA)の理事を長く勤め、農協のナンバー2にまでさせていただきましたが、吸収合併された「中核市」の船橋市の農協出身でありトップの組合長にはなれず、定年で昨年春退職しました。
そう言えば、在任中は財務諸表の見方を勉強していましたね。
両親は、今も毎日畑に出ており、現役バリバリの農家です。
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経営者にとって、会計データが見れることは重要ですが、たいこ様は農協監査を行っているとしたら、会計数値・税務に関する「相当の」知識や経験はすでに十分お持ちなのではないかと思います。
税務の勉強をすることは悪いことではありませんが、
腕が立つ税理士をきちんと選んで(これは結構難しいですが)、他のことに頭脳を使った方が個人的には事業承継に有用だと思います。
私たちプロの税理士でも、毎年の税制改正を確実に押さえて高いレベルで仕事をするのは簡単ではありません。税理士でも個人事務所で一人でやっている方は、独立して10年もすると(コミュニケーションのレベルは上がっても)、税務知識のアップデートはつらくなってきます。
口だけ、営業力だけで仕事をしていたら専門家としては終わりです。
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税理士法人TOTALでは、有資格者には税制改正大綱を読むように勧めています。また、税制改正他の社内研修も行っています。講師は私か、専門学校の講師出身者が多いですね。
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逆に、経営者の税法の勉強は、自社に関係する税制やその改正を軽く押さえて顧問税理士に確認するくらいで良いと思います(餅は餅屋です)。
税理士試験の法人税法、所得税法、相続税法のB以上は、税理士事務所の職員が一年苦労してやっととっているのが実情です。
そんなに簡単ではありませんし、40代のたいこ様が簡単に1年に1税法こなしたら、将来のキャリアのために頑張っている他の税理士試験受験生がかわいそうかな。
実家の運輸・不動産業務の業務に関しては瞬時に判断できるよう知識は正確かつ大量に必要です。
営業スタイルも、信用がある大企業と、自分で信用を作らないといけない中小企業では異なります。親から引き継げるものとそうでないものがあります。人脈でいくのか仕組みで行くのか、組み合わせたり新たに作ったり。
また、大きな組織と、中小企業では、部下との関係も異なります。会社の従業員さんとの人間関係は一朝一夕にできるものではありません。早めに付き合い始める必要があります。
中小企業では組織に対する求心力が働いていませんし、大企業ほど人のレベルが安定していません。それに合わせた採用・教育・管理が必要になります。これだって知識や技術が要ります。
農協「監査」と「経営」で最も違うのは、
農協「監査」は、基準・ルールが決まっていて、それに合っているかどうかを確かめるのが仕事になります。「答え」があらかじめ決まっているのです。
これに対して、「経営」は、答えが決まっていません。答えは一つなのか、複数あるか、もっといい答えがあるか、そもそも一つもないのか…、
情報を集め、仮説を立て、価値判断し、実行し、検証する
これを繰り返し、繰り返し行うことになります。
この価値判断をした経験の蓄積が経営者の力になります。
大きな組織の監査では、この辺の感覚はあまり磨かれません。
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税理士法人TOTALには、監査経験が豊富な本部長(公認会計士)がいますが、外から監査するのと中で経営するのは大違いで、経験や知識が不足してストレスも多く苦労しつつ頑張ってくれています。
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父に経営判断の方法を教えてもらい、場合によってはその一部でもやらせてもらう。
今すぐこれを始めていいのではないでしょうか。
それはもうやっているというなら、
事業承継を早めて、新たに新規事業を起こして実際に経営を始めてもいいように思います。
40才という年齢は、決して事業承継を始めるのに早い年齢ではありません。
それでも、5年の時間があれば、きちんと事業を承継をするのに十分な時間かもしれません。
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日本の社会全体に高齢化は進み、中小企業も事業承継は重要になってきています。
税理士法人TOTALでも、事業承継関連のサービスは需要が増えています。
お子さん(後継者)が30才前後になるとスタートし、40代前半にはだいたい完了します。
そう言えば、会計業界でも所長の高齢化・事業承継も進み、税理士法人TOTALでも、4つの会計事務所が合流してくれています。これも知識や経験が必要で私もやっとわかってきたところです。
機会があれば引き続きチャレンジします。譲渡希望の所長税理士さんがおられましたらご連絡ください。ていねいに対応させていただきます。
また、税理士法人TOTALの各本部長(店長)には、経営者として価値判断を行ってもらっています。
大変ですが頑張ってくれているので最近はだいぶ助かっています。
本部長税理士はこの経験を活かして、たくさんの社長の良き相談相手になってくれています。
今頑張ってくれている本部長、そしてこれからなる本部長の中から、私自身の後継者も育成しないといけないのでしょう。
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