2014年03月12日

新卒就職 会計事務所の教育・賃金・労働時間

税理士事務所求人・採用情報の高橋寿克です。

ただいま、スタッフを大募集中です。ご応募お待ちしています。

ご質問はここをクリック

maeya 様よりご質問です。
■23歳
■男 
■資格
 〈合格済〉 簿記1級、簿記論、財表、消費税
 〈学習中〉 法人税、事業税  同大学院1年)
■会計事務所経験  1年程度アルバイト経験あり(月30~50時間程度)
■居住地 地方大都市
 
高橋先生、はじめまして。現在、就職活動中の大学院1年生です。最終的には税理士になり、中堅・中小企業の味方としてお客様に頼られる存在になりたいです。しかし、先生の以前の記事にあったように、税理士事務所は研修制度が整っていない所が多く、新卒で入社することに不安があります。
そのため、現在3つのプランを考えています。

1.現在、とある上場企業から会計・税務の知識を買われて、お声がかかっています。その企業はITと会計・税務・経営などを組み合わせてお客様にソリューション提供を行います。そこに新卒入社して、社会人としての基礎、ITスキル、営業スキル、各種業界・業種の知識を身につけて、数年後、税理士事務所(税理士法人)へ転職。
  *懸念事項
税理士になりたい強い意志があるにも関わらず遠回りしているように感じます。また、会計事務所未経験の状態での転職に不安があります。

2.研修制度が整っているBIG4への新卒入社を目指す。
*懸念事項
やりがいはあるが、顧客が大企業なため、案件が大きすぎてお客様の役に立っている実感があまり湧かない、業務が細分化されており業務全体を見渡せないという話をよく目にします。

3.顧客の多くが中堅・中小企業で、かつ、研修制度が比較的整っている中堅税理士法人に新卒入社を目指す。
現時点では、
【A社(事情により変更して表記しています)】
【税理士法人TOTAL】を考えています。
*懸念事項
奨学金返済が約900万円あるため給与面が少々心配です。

もしよろしければ先生のアドバイスを頂ければと思います。

A.
過去に関連する記載がありますのでお読みになっているかもしれませんが…。
会計事務所は新卒ではいるべきか、中途入社が良いか
会計事務所未経験者の退職理由(お局さん・番頭さんの役割)

財閥系や金融・一部大手メーカー(以下「財閥系等」)なら1か月くらいの集合研修や、1年程度のOJTでの一通りの教育もあるようです。
それに対して、会計事務所で、研修制度が整っているところは少ないのが現状です。
中小事業所が多く、そもそも研修に人手を割けないのが最大の原因ですが、
一方で、財閥系等のように終身雇用を前提としていないだけにやむを得ないところもあります。

最近では、動画研修を売りにする会計事務所も増えてきました。
うちも録音や動画を利用していますが、他の中堅若手税理士法人の方に聞いても
「採用広告」として強調してるだけで効果はあまり期待していないようです。
1週間程度の動画研修でうまくいけば楽なんですが…。
実際にはある程度の集合・動画研修のあと、実務(OJT)で鍛えていくことが多いと思います。

1.上場企業(IT・会計・税務・経営ソリューション)
会社名がわからないので、不正確になるという前提で個人的な意見としてお読みください。

財閥系等なら、組織がしっかりしていて人のレベルも高い会社で新卒時に社員教育を受けるのはうらやましいいし、ありうると思います。ただ、組織がわかる・キャリアが生きるには最低3年できれば5年程度は在籍した方が良いので自分にとって遠回りかどうかの判断することになります。
このルートで税理士として成功した方は結構おられるはずです。

また、公認会計士が会計の知識を生かしてソリューション会社を作るのは今後も続くでしょうし、そのうちの一部は大成功を収めるでしょう(TKC、オービック等)。

上場企業の良さと、会計税務からあまり離れないことの相乗効果を期待しておられるのかもしれませんが、残念ながらこのタイプのソリューション会社から転職してきて税理士として成功している方を私は知りません。
むしろうまくいかなかった例をたくさん見てきてしまっているので個人的にはお勧めしにくいです。

2.BIG4
BIG4についてはおおむね maeya様の分析のとおりかと思います。

繁忙期の真っ最中ですが、税理士法人TOTALでは採用活動を続けています。この時期の転職希望者で多いのが激務で耐えられなくなっておやめになったBIG4をはじめとする大手会計事務所経験者です。
通常の街の会計事務所の勤務者だと、お世話になっている会計事務所のことを考えて3月末(または5月末)をもって退職する方が多いのですが、大手は激務過ぎて最繁忙期の前に退職される(逃げる)方も多いようです。

先日もあるBIG4及びそれに準ずる最大手クラスの元職員の方と面接しました。
閑散期でも終電近く、、繁忙期だとタクシーや泊まり込みなど
退職者なので割り引いて聞かないといけないと思いつつ大変だなあと思うような話が多くなっています。
「体や精神が壊れる前に転職しました」みたいな…。
中堅以上はどこも人手が足りなくなっているのでより厳しくなっているのかも知れません。

BIG4や最大手が給与が高いのは労働時間が普通の会計事務所より3割以上多いということが一番大きな理由です。
(長期にわたって勤めれば、高付加価値業務の分、給与が高くなりますが、入社してしばらくはそれほどでもありません)

なお、ご存知だと思いますがA社は、BIG4に次ぐ監査法人の系列の税理士法人です。
個別の内容は知りませんが、
最近特に成長しているということはなさそうですので、準大手監査法人系列らしい
業界的には恵まれた社員教育と比較的高い給与水準だと思います。
注意点は、
こちらのトップご自身がおっしゃっているように、アップorアウト(成長か退社)の企業風土であること
maeya様が大学院で英語を鍛えられていると思うので英文系の仕事が集中するであろうこと
(BIG4等でもTAXには英語がビジネスレベルで強い人は多くないので特定の人に仕事が集中しやすくなります)
お客様との接点は少ないであろうこと(クライアントは外資系と中堅企業が多いはずです)
そしておそらくはかなりの激務であろうことです。

3.税理士法人TOTALについて
本来ならこの掲示板では税理士法人TOTALの採用情報は書かずに
税理士法人TOTAL 採用情報」をご覧になっていただくのですが、
最近の傾向を少々書き記していきたいと思います。

ありがたいことに、最近当社を志望してくれる方が多くなってきました。
関東近県はもとより、東北から九州地方まで。
そういえばスタッフ数も今年中には100名を超えるでしょうから、中堅税理士法人になろうとしています。

ただ、過大評価してもらっているのかなあという危惧もあります。

「あこがれていました」とか言われると ちょっと…。
まだまだ、とてもとてもその水準にはありません。

当社は、給与水準は業界の中ではやや高いという程度です。

労働時間は「普通」です。
都内はオフィス賃料が高いので、長時間労働の事務所が多くなります。郊外は賃料が安く主婦が多いのでのんびりした事務所が多くなります。
うちは業界平均くらいの労働時間
 閑散期は9時〜6時半
 繁忙期は9時〜8時半
くらいです。
(もちろん、主婦の方は4時〜6時半くらいには帰られます)
このあと、繁忙期と閑散期の平準化は進めますがしばらく時間がかかるでしょう。

税理士法人TOTALでは、主婦には多様な選択肢を用意していますし、税理士受験生にも受験スタッフのような制度も用意しています。
受験スタッフの要件もだいぶ緩和して、学生・院生の受け入れも始めました。
それでも、受験生にとって両立は厳しいですし、税理士試験受験に専念するためにお辞めになる方もいます。
本気で受験との両立、家庭との両立を目指す中堅税理士法人が少ないので、うちの事務所に期待され過ぎるのかもしれません。

また、うちは素直で伸びそうな方、地頭が良い方、経験がある方を採用するので、本人は自分が優秀なことをよく知っておられるので(やや厳しい言い方をすれば誰でも人間は自己評価がやや甘くなるので)不満は尽きません。

給与が不満でおやめになる方も(あまり本人はそういう言い方はしませんが)もちろんいます。中長期的な成長を支援する方向で処遇していますから目一杯は働いてもらっていませんし。
受験や家庭の縛りが少ない方はそれなりに働いてもらって給与水準も上げています。

できれば社員の給与は上げたいと思っていますが、一方で、当社は成長企業なので一定の限界はあります。
社内外の安定した人間関係により、中長期的な成長を続け自然と給与が上がる仕事をしてもらうのが理想です。
税理士法人TOTALの経営者としては、2〜3年中に給与の絶対水準を10%〜上げて、繁閑の差を縮小させるのが目標です。

maeya様は、大学院まで自ら道を切り開いてきたことと思います。
最近では大学院進学者の過半数が奨学金を使っているとお聞きしています。
返済を考えると、奨学金の借金の多さは気になります。
おそらく、年収は額面で100万円近くが借金の返済に消えるでしょう。

体力に自信があって頑張れるなら、BIG4等、給与の高い法人又は初任給が高い企業で働く。
体力に自信がないなら資格を取るまでは(大学院免除でないなら)実家から通えるところで働くという選択肢もあると思います。
もちろん、一経営者としては当社に応募していただけると嬉しいのは事実です。

どの選択をするにしても、すべてに満点ということにはならないと思います。
優先順位を考えて、悔いがない選択をしてください。


※なお、
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コメント一覧

1. Posted by maeya   2014年03月12日 22:39
高橋先生、非常にお忙しい時期であるにも関わらず、詳細なコメント誠にありがとうございます。

まだ自分の中でどのようにするか決まっていませんが、今は「就職活動」と「税理士試験」に全力を尽くし、選択肢を広げたいと思います。

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