2013年06月

2013年06月29日

会計事務所のパワハラと社会保険

東京都千代田区・新宿区と千葉県船橋市の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

税理士法人TOTALでは、9月入社に向けて、スタッフを募集しています。ご応募お待ちしています。

それでは、MOGU様よりのご質問です。
■年齢 45歳
■性別 女性
■資格 簿記2級 宅建
■職歴 病院勤務、経理事務等8年ほど
■学歴 関西圏私立大学、
■会計事務所経験 現在5人ほどの個人会計事務所勤務 1年少し 入力、月次まで
■居住地 関西圏
■その他 子供三人を持つシングルマザー

現在の職場は友人の紹介でしたが、当初から税理士とその奥さんの私一人に対するパワハラがひどく悩んでおりました。
事務所の所員はほとんどが簿記すら持っていない縁故入社なため、現在担当は一番多く持っています。先生もなんとなく、最近は仕事ぶりを認めてくれていると感じてはいます。

来月勤務税理士を雇って法人成りすることになったのですが、先生が経費を掛けたくないからと社会保険加入をしないと決め、税理士国保も脱退しました。社会保険加入の希望を言うと、給料をそのぶん下げると言われました。
また、税理士会の支部長でもある人物が法人になっても社会保険に入らないのが許されるのかと疑問ですが、同僚に言わすと、先生の意見に逆らうのなら、私が辞めるまでのことだと言われました。
決算もさせてもらえず、ボーナスもなし。
転職はいつも頭をよぎりますが、年齢の割りに勤務経験が少なく、悩むところです。

Q.
今回は転職すべきか相談です。
もう少し我慢して、科目合格か、社労士の資格取得を目指すべきか迷っています。
どうかアドバイスお願いします

A.
1.会計事務所とパワハラ
会計事務所は、零細事業者が多く、中堅以上でも個人商店の域を出ません。
このため、職員への接し方に難がある所長が一定以上いるのは事実です。
(私自身も残念ながら全く身に覚えがないとは言い切れないので、普段から注意するようにしています)

会計事務所が長い方はその環境が普通になってしまい、理不尽な圧迫も苦痛と感じなくなってきます。
このため、一般企業から転じてきた方にはパワハラに感じられるし、同僚に相談しても理解が得られにくかったりします。
もちろん、完璧な上司などいないので、ある程度、部下が上司に合わせる必要があるのも事実ですが。

2.会計事務所と社会保険
個人の会計事務所は人数が多くても、社会保険(厚生年金・健康保険)は強制加入ではありません。
社会保険に加入していない個人会計事務所も多いでしょう。
また、入社後数ヶ月は社会保険に加入させないという会計事務所もあります。
(離職率が高いので手続きが面倒なのかもしれません)
税理士国保は所長自身は(扶養家族の少ない従業員も)、負担軽減になるので個人会計事務所の多くが加入しています。

税理士法人になると、法律的には社会保険に強制加入です。
(1)原則 社会保険に移行するか、(2)特例でそのまま税理士国保を継続するか選択します。
ただし、どちらの場合も厚生年金への加入が義務になります。
税理士法人成りをする際、税理士国保の継続には、厚生年金加入手続きが必要です。
厚生年金に加入する気がなく、年金事務所での手続きが出来ないので税理士国保も脱退せざるを得ないのでしょう。

MOGU様の場合で、仮に年収300万円、従来の税理士国保が100%従業員負担とすると
税理士事務所は(1)原則で 年40万円程度、(2)特例でも約25万円の負担増になります。
従業員5人程度で縁故が多い個人会計事務所では残念ながら、超過利益はあまりないので
社会保険に加入したら、賞与をその分減らすか、違法を承知で給料を月2〜3万円下げるかしないと事業を継続させられません。零細会計事務所の給与は低いので、下げ余地も限られています。

社会保険はMOGU様一人ではなく、法人の全社員を加入させなくてはいけないので所長は反対するだろうし、同僚からも(社会保険に加入すると自分の手取りが減る人が多いので)賛同を得られにくいでしょう。
お客様に社会保険未加入事業所が多いのはこのためです。

それでも、さすがに、税理士法人で社会保険未加入は聞いたことがありません。
税理士は、税務に関する法律家です。法律家が積極的に法律違反をするのはいかがなものかと個人的には思います。
営業や事業承継等で、税理士法人化の必要はあるのでしょうが、
無理に税理士法人化するのは適当でない経営状況なのでしょう。

3.転職と資格
このまま、社会保険未加入なら国民健康保険、国民年金を自己負担することになります。
もっとも、市町村国保になっても、MOGU様の場合は負担は減るかもしれません。

マイナンバーが平成28年1月に始まると、いずれ、社会保険に加入することになると思います。
その場合は、事実上の賃下げは避けられないでしょうが。

税理士試験の科目合格を考えているようですが、5科目合格は、さすがに家庭と仕事と受験の両立、年齢を考えると難しいと思います。法人税、消費税、相続税の税法科目は持っていれば転職の際に評価してもらえるでしょうが、結構きついです。会計科目なら実務経験で補えますしあまり意味はないかもしれません。

先日、某県ナンバー1の社会保険労務士の方とお話ししましたが、社会保険労務士事務所の勤務の状況は会計事務所よりはるかに悪いようです。「年収500万円職員に払うことは考えられない」と言っていました。
未経験の40代後半ペーパー有資格者を求める社労士事務所もないでしょう。職場で求められていないなら社労士試験はお勧めできません。

入社 2年目以降の給与水準は、多くの会計事務所では年功序列の要素が少ない、実力主義となります。
自分の給料は自分で上げるしか手はありません。最終的には自分の生産性を上げるしかないのです。
この場合、勤務税理士が入ってくること、決算をやらせてもらえないことは、付加価値を上げていくうえで痛いでしょう。入力補助者の付加価値は上限が決まってきます。
シングルマザーで三人のお子さんがいることは、転職する上では残念ながらハンデになるかもしれません。
そこを承知で雇用して、仕事ぶりを認めてくれているのなら、
まずは今の税理士事務所での付加価値を上げることを考えてもいいのではないでしょうか。
担当件数が一番多いのは一番評価しているということな気がします。入ってくる勤務税理士以上の評価を得るべく努力すれば、結果として成長を早めることになります。
作業のスピード、精度を上げると同時に、決算や申告書作成、場合によってはお客様担当にも積極的に取り組んでみる。今後の子育てにお金がかかることを考えると、残るにせよ転職するにせよここまで目指してほしいと思います。

ものの見方を広く持ち、所長や奥さんといかに円滑な人間関係を築けるかをまずは試してみませんか。
もっとも、残念ながら、本当に人格に問題がある所長夫婦もいますので、自分を追い詰め過ぎないようにしてください。

あと2年働けば、会計事務所経験は3年になります。転職市場での評価も上がります。それまでどこまで仕事ができるようになっているかが勝負です。

もちろん、並行して在職中に転職活動をすることは止めません。どこかにMOGU様をもっと評価してくれる会計事務所があるかもしれません。求めるものは税理士事務所によって違いますから。

税理士法人TOTALには子育て中の主婦も多くいます。時間をうまく使い、ご両親(おじいちゃん・おばあちゃん)、保育園・学童、ご近所さんや友人をうまく巻き込みながら、やりくりを上手にしています。
子供がいるから頑張れる面もあります。子育てとの両立は大変でしょうが、がんばってください。

2013年06月01日

税理士事務所とハローワークの求人票

東京都千代田区・新宿区と千葉県船橋市の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

税理士法人TOTALでは現在、相続税関係や医療のお客様も増え、会計事務所経験者が各本部とも不足しています。たくさんの経験者の方のご応募、お待ちしています。また、未経験者(2科目以上合格者か、庶務・総務要員の方)も歓迎しています。

それでは
A様よりのご質問です。
内容:
■年齢  28歳
■性別  男性 
■資格  簿記1級 全経上級
■職歴  不明
■学 歴 不明
■会計事務所経験 なし
■居住地 地方
■その他 

(ネットの匿名性、質問をしてくれた方の状況が不明なことから
出来るだけ具体的な状況を省略せずに書いていただいた方が回答をしやすいです。)

Q.
将来税理士を目指している者です。税理士受験資格を取得して、そろそろ実務経験を積みたいと思い、就職活動を始めた者です。

このブログでも書かれてますように、経験者を対象にした求人しかなく、そういったところに履歴書を送りましたが、残念な返事でした。地方は求人そのものも少ないのが現状です。

そんななか、経験不問の求人がありました。応募しようかと思ったのですが、求人履歴を辿ると短期間に何回も掲載されているところでした。これは離職率が高いことを示しているのか、勤務期間が続かない要因が何かあるのか心配です。そもそも未経験者なんだから細かく選べる立場にないとは重々承知しております。もしよろしければ、何かアドバイスいただければうれしいです。

A.
未経験者はつらいよ〜経験者限定・優遇」でも書いたように、
未経験者の採用は、会計事務所にとってリスクが大きすぎて儲からないことが多く、
手間ヒマかけて、社会人経験・会計事務所経験のない人を育てることをする&出来る事務所はほとんどありません。
そのため、経験者限定・経験者優遇の税理士事務所が多くなります。

ハローワークの求人は、費用が掛からないのが特徴です。
無料なので、良い人がいれば採用したいというスタンスの事務所はかなりの期間出しっぱなしにしています。
そうすると求人履歴が多くなることになります。

ハローワークの求人履歴が多い事務所は
(1)良い人がいたら採用しようとしているだけ
(2)応募する人がそもそも少ない
(3)規模が大きかったり、成長率が高くてたくさんの人を必要としている
が考えられます。

(1)良い人がいたら採用しようとしているだけ
応募する側からすると、採用される確率は下がりますが、
経験不問としているのは、未経験者を歓迎しているからでもあります。
その会計事務所の求めるものと合えば採用されるでしょう。

(2)応募する人がそもそも少ない
零細事務所で 給与水準等の応募条件が落ちるケースです。
それでも派遣業務よりは、はるかに良いと思いますし、
給与条件等ががまんできるなら、経験を積むという選択もあり得ます。

(3)規模が大きかったり、成長率が高くてたくさんの人を必要としている
この規模なら、事務所の人数や、その推移を見れば、どれくらい退職しているかもわかります。

もちろん、求人履歴が多い税理士事務所の中に、離職率が高い事務所も含まれているとは思いますが、
ハローワークの求人履歴回数と 離職率が高いかはあまり強い相関関係はないと思います。
何人採用して何人離職したかが問題なのです。
会計事務所・税理士事務所の離職率」参照

税理士法人TOTALも、(3)から、ほとんどいつもハローワークで求人をしていますし、職種や場所別に細かく募集しますから、求人履歴は多いと思いますが、離職率は会計業界ではかなり低い方に属します。

会計事務所の求人も、ある種、広告ですから、事実の通りとは限りません。
ホームページも、ビデオも、求人広告も必ずしもあてになりません。
離職率の情報も税理士事務所・税理士法人発表はいい加減なところもあります。
残念ながら、成長率が高く若い・ベンチャー色が強いところや準大手の税理士法人・会計事務所の中には広告が上手で
(○○%など具体的にかなり低い虚偽の数字で)離職率が低いと表示しているところをがあることも知っています。1シーズンで50人〜200人くらい採用して、増えるのが10人〜30人だと、1年以内離職率70%以上なのでは?
極端な例だと離職率が低いと表示している経営者本人から大量解雇の話をお聞きしたこともあります。
税理士法人TOTALのように悪いことも公開するスタイルは一般的ではありません。
うちは合わない人の採用はお互いに損だし、疲れると思っているので事実の通り公開していますが
悪いことを書くと募集が減るので嫌がる税理士も多いのです。
(明らかな嘘を繰り返すのは経営者の姿勢としていかがなものかとは思います)

短期間に離職が多いかは、
ハローワークなら、相談すれば、本当にどのくらい辞めているかもわかるはずですので、
(明らかな問題がある会計事務所かどうかはハローワークならわかります)
心配なら、個別にハローワークの相談員の方に相談した方が良いでしょう。

ネットの広告をあてにせず、ハローワークでの相談や
ごまかせない数字の分析をした方が効率が良いと思います。

危険な会計事務所の見分け方」も参考にしてみてください。

また、地方は場所によっては本当に求人が少ないはずですから、迷うよりは、実際に行動してたくさん面接を受ければ、より直感が働き、良い就職活動ができるのではないでしょうか。

就職活動頑張ってください。

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税理士 高橋寿克

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高橋寿克

東京・横浜・千葉・埼玉、大阪の総合士業グループ(税理士、司法書士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士)
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