2014年01月13日

会計事務所の教育と退職理由

税理士事務所求人・採用情報の高橋寿克です。

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藍子様よりのご質問です。
■年齢 26歳
■性別 女性
■資格 財務諸表論
■学歴 専門学校卒
■会計事務所経験 8か月
■居住地 地方

こんばんは!はじめまして。

地方の税理士事務所に8ヶ月前未経験ながら採用していただき志を持って入所しましたが、私個人の実力不足、努力不足、事務所の雰囲気に馴染めず退社することになりました。 税理士の勉強は続けていくつもりですが、会計事務所の勤務はもう考えておらず、自己啓発の一環として他の一般企業に入社した際のキャリアアップにしていく考えです。

会計事務所は離職者が多いということで、私もその一人になるのですが、今後会計事務所勤務希望の方のためになるのではないかと思い質問させてください。
会計事務所離職理由として、高橋先生は激務が原因とおっしゃっていましたが、私の場合は違って、担当を持っておらず、かといって入力業務なども月の半ばからしかなく、担当業務がほとんどない、ゆくゆくは担当を持たすということで監査業務を先輩と同行して行って一緒にやってみるのですが、なかなか覚束ない。つまり、事務所内での無力感でいたたまれなくなり退社にいたりました。

激務で忙しい会計人の方々からすれば失礼な話ですが、私は本当にこの状況がきつくてよく訳もなく泣いてました。
所長や他の職員の方々は担当を持っていてもちろん忙しいので向こうからいろいろ声かけてくれることもなく(それがどこも当たり前ですよね。)自分から積極的にいくこともなかなかできず、辛かったです。

Q.
私だけかもしれませんが、激務というわけではなく所内での疎外感に負け、克服できずに辞めていく方もこの業界には多いのでしょうか?

A.
藍子様お疲れ様でした。
志を持っていた一人の若い会計人が会計業界を去ろうとしているのは残念です。

はじめに、会計事務所は必ずしも「激務」ではありません。
むしろ、受験生が多いので男性正社員の職場としては平均すれば労働時間は短い方でしょう。
女性にとっては規則的で労働時間も調整しやすい職場なので、主婦も多く、女性の比率が半数を超えることが多いのです。多くの会計事務所は繁忙期以外は労働時間的には楽な職場です。
大手税理士法人や成長中のベンチャー会計事務所などごく一部を除くと、他産業と比べて決して激務ではありません。
(大手税理士法人は給料がそれなりに高いでしょうし、ベンチャー企業はどこの業界でもそれなりに激務です)
一部の会計事務所が激務であるという表現が、会計事務所業界は激務だと読めてしまったとしたら申し訳ありません。

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税理士法人TOTALの退職理由は、直近10名では
 家庭の事情(夫の転勤、親・妻の病気等) 5名
 独立                       3名
 受験専念                    1名
 方針と合わない                1名
 ステップアップ                 1名
 レベルについていけない           1名
 (重複があるため合計は10名になりません)

受験専念も、2年連続で僅差の不合格で、「激務」というよりも、頭が切り換えられないという感じです。
税理士法人TOTALには、いわゆる本当の「激務」で辞めた方はおそらく一人もいません。
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会計事務所は、個人事務所・個人商店が多く、ルールや教育が整っていないところがほとんどです。実は有名な大手の税理士法人でも、ごく一部の安定しているところを除くとルールや教育が大企業のようには整備されていません。

会計事務所の外回り担当者に求められる仕事はかなり大変です。
私が会計業界に入った20年前は、会計の知識があって、領収書チェックと申告書作成ができれば何とかなりました。
今は、ソフトの普及と、インターネットによる情報の氾濫で、求められるものが著しく高度化されています。
簿記や会計科目合格者程度の税理士以外(無資格者)の外回り担当者による領収書チェック、ソフトの指導に高い費用を払う会社は減ってきているのです。

会計事務所外回り担当者に求められるのは
会計ソフトの使いこなし、税務に関する知識はもとより、
労務・許認可・法務相談、社会情勢(場合によっては国際情勢)、金融、もろもろの経営相談、
ときには夫婦問題や子供の教育など家庭内の相談…
20代女性から見ると気が遠くなりそうですね。

お客様は小なりといえども実際の社会で生死をかけてビジネスをしている社長さんやその奥様です。
この方たちの話し相手をしなければなりません。

もっとも、知識の蓄積(と人間関係)が必要だからこそ、この変化の速い時代に
若いうちは給与が低くても、きちんと努力を続けられれば給与が上がり続けて、良い税理士法人に勤務するか(営業力がある人は)独立すれば60代でも(場合によっては70代でも)通用するのが税理士業界の良い点です。
お客様の中小企業を見ていると、税理士業界ほど安定性がある仕事はほとんどないことに気付くはずです。

会計科目1科目合格程度の実力で外回りはかなりきついでしょう。
何をしたらいいのか、どうやったらいいのか 誰も教えてくれない、
わからなことが不安になり、不安が続くと不満になります。

従来からある50代後半以上の税理士の事務所の多くは、単価が高いので、内勤でじっくり育ててから外回りをして、お局さんや番頭さんのような人が教育もしてくれていたりします。
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お局さん、番頭さんを悪く言う書き込みがネットには目立ちますが、勤務時代、お局さんに育てていただいた私は、彼女に今でも非常に感謝しています。社会常識がない私に、マナーと仕事を丁寧に教えてくれたのですから。
その当時は、「うるさいなあ」、「細かいなあ」、「意味があるのかなあ」と感じていましたが(笑

税理士法人TOTALは、社会人経験の足りない新人には外部の専門機関でマナー研修等を受けてもらうことにしました。
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若い税理士・公認会計士の新しい会計事務所や成長率の高い事務所の多くは、客単価も低いので人手はかけられないので中堅スタッフは忙しく、他の人の面倒を見る余裕はありません。所長は営業で手いっぱいです。慢性的に人が不足しており、教育不十分なスタッフをあわてて外に出さざるを得ないケースもよく見られます。

また、成果主義的な賃金体系により、自分の担当についてのみ気を使い、周りのスタッフとの関係には気を使わないスタンドプレーヤーも増えています。
開業から10年経たないような会計事務所には、お局さん、番頭さんのような全体を考えてくれて気を使う人がいなかったりします。
こんな状況では、税理士事務所は個人商店ですから所長がスタッフに目が行き届かないと、放置されて、やるべき仕事のレベルに圧倒されて不安感だけが増しています。

このため、従来は大手会計事務所は(頭脳と資格優先のBIG4を除くと)、税理士試験3科目以上合格と会計事務所経験2年程度以上を求めることが多かったのですが、
最近は、大手による寡占化が他の業界同様進んでおり、少子化で人の取り合いが進み、採用のハードルを下げてきています。税理士試験2科目が一つの目安ですが、未経験者も可になってきており、その分、現場に負荷がかかっています。

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この問題を解決するため、税理士法人TOTALでは、本人の希望を聞いて外回りの時期を遅らせたり、そもそも内勤のみの仕事をしてもらうスタッフを増やしています。特に女性はそういう希望の方が多くなっています。

また、税理士2科目合格の前に、受験スタッフ等、パートとして採用することも増えてきました。
今年は、優秀な20代の若者が何名もパートスタッフや内勤スタッフとして入社してくれました。
外回りしない分、給料は若干低いですが、じっくりと成長していってもらいたいと思います。

船橋本部では引き続き、パートスタッフ、内勤スタッフが不足しています。
給与計算経験者も大歓迎。
ご応募お待ちしています。
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藍子様の所内での疎外感は、仕事が定義化されていないこと、手が空いているときにきちんと仕事を振ってもらっていないこと、教育がなされていないこと、このため成長実感がわきにくいこと、職場に一体感がないこと、信頼できる・相談しやすい上司がいないこと、トップの方針が見えないか必ずしも好きになれないことなどが複合しているようにお見受けします。

スタッフの業務の定義、手の空き具合・時間管理、教育、適切なステップの進め方
こういったものがスタッフの適切な成長には欠かせません。

しかし、競争の激化に伴う余裕のなさから、(会計事務所業界だけでなく)社会全体にそういったことができる企業は減少しています。

ご質問は
職場の「疎外感に負け、克服できずに辞めていく方もこの業界には多いのか」

      ↓

答えは、「以前より多くなっている」 と思います。

これは会計事務所固有の問題かというと社会一般の問題な気がします。大企業でも3年内離職率は30%もあります。
どの業界も高度化しており、専門知識がなかったり訓練されていない20代の若者にはやさしくないのです。もちろん日本だけではなく、欧州の若年失業率(25歳以下の若年者の半数が失業者という国もあります。 ギリシャ58.4%、スペイン55.7% フランス26.7%、イタリア37.8%など)、中国の蟻族(ありぞく 大卒なのに良い給料の職に就けない若年者層)、韓国の財閥入社競争の厳しさと若者達の絶望など、世界中で見られる現象です。
ちなみに日本の若年失業率は8%程度と決して高くありません。

年間離職率が15〜20%程度だと日本の他産業と同じ水準に過ぎません。情報化社会の進展で、若者が実態以上に自分の会社、自分の業界を悲観したり、「悪い」と誤認しているのです。

中小企業では3年後に残っている人の方が少ないくらいでしょう。20代の若者にとって、社会は以前よりかなりつらいものになってしまいました。
会計事務所が特に疎外感が強い業種・職場だとは思いません。離職率も中小企業の平均よりは低いくらいでしょう。

20代の若者は、人間関係や教育システムの不備に伴う疎外感を感じるが多いのは事実としてあると思います。
今となっては、しっかりした社員教育を受けられるのは、大メーカーや財閥系の大企業の新卒採用等、限られた会社しかないのかもしれません。

会計事務所業界なら、社員教育は
(1)激務で良ければ、学歴と科目をそろえられれば、BIG4
(2)スタッフ30人以上、設立15年以上、所長が45歳以上65歳以下の事務所
がこの順に良いと思います。
(感覚的な書き方ですが、なんとなくご理解いただけるのでは)

ただ、(2)は当たり外れもあり、個別にきちんと調べないとわからないところもあります。
それ以外の会計事務所だと、システム的な教育は期待しにくいのが現状です。
中堅以上なら「〇〇税理士法人 クチコミ」で検索する手法もありますが、そこもネット対策して悪評が出ないようにしている事務所もあります。
確実なのはBIG4以外なら、実際に中堅税理士法人に入っている友人・辞めた人のクチコミくらいになります。

なお、これらは科目が進んでいたり、学歴職歴等が優れている人、コミュニケーション能力が高い人以外は採用されません。
それ以外の方は、(2)にパートで入るか、50代の所長税理士で15人程度までの穏やかな方の事務所がお勧めです。
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税理士法人TOTALは個人事業から合わせると開業15年目でずっと真面目にやってきましたが、それでも最近になって大原簿記学校の先生が複数名在籍してくれたり、他の会計事務所の番頭格の方が何名か入社してくれたりして、やっと社員教育の仕組みができつつあるところです。
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今、つらい思いをしている藍子様には、あえて厳しい言い方になりますが、転職をする際にきちんと職場を選ぶことは重要ですが何か素晴らしい「私」にピッタリのホワイトな業界、すばらしい職場があると期待するのはやめましょう。
縁があって入社した職場なら、次は3年くらいは頑張る方が良いと思います。
(本当は、もう1事務所くらい経験してから業種を変えてもいいとは思います)
そうしないと仕事の技術もつかないし組織・人間関係の何たるかも学べません。転職時に職歴がキャリアと見てもらえないし、年齢とともに不利な取り扱いを受けるようになります。
社会は学校とは違います。企業に何かを期待するのではなく、企業に何をもたらされるかで評価されます。
環境を変え、他人に変わってもらうよりは、「自分」を変える努力をすることが求められるのです。

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私は、こういった問題を克服するために、標準化、ルール化と役割分担を進めています。税理士法人TOTALでは、スタッフレベルの業務は、メイン業務については標準化や情報の共有がほぼ終わっています。
中間管理職も徐々に定義化されてきました。
このため、スタッフが、自分は手が空いているのに周りが教えてくれないので疎外感を味わって退職するということは税理士法人TOTALでは最近では記憶にありません。
その分、仕事量や仕事のレベルが高く、それについて行けずにやめる方は残念ながら一定程度発生します。採用ミスもありますが、一度採用した以上、安易な退職が発生しないよう、配置転換してより簡単で合った仕事を担当してもらってステップを細かく刻もうと考えています。

私も極力、スタッフ一人一人に声掛けしますが限界はあります。身近な上司が必要です。
このため管理職・パートナー業務の標準化・機能分化を現在進めている最中です。
おせっかい焼きで、よく気が付く、面倒見の良い、それでいてくどくない、現代のお局さん・番頭さんをたくさん育てたいと思います。

これができれば、強い負けない組織になるはずなのですが…。
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