2016年11月29日

税理士事務所・会計事務所の労働時間

税理士事務所求人採用情報
税理士法人TOTAL代表税理士の高橋寿克です。

税理士事務所の求人広告は、近年にない売り手市場です。
大原簿記学校やTACの求人誌は、数年前に比べるとだいぶ分厚くなりました。
特に中堅以上の会計事務所が今まで1ページだった広告を2ページに変更しているのが目立ちます。

成長中の中堅会計事務所の採用難がうかがえます。

7、8月は定期採用シーズンなので、税理士法人TOTALも面接をしていますが、最近の特徴は、中堅・大手税理士法人の多くは労働時間が極端に長くなっているということです。
(普通の会計事務所、昔ながらの会計事務所の労働時間は決して長くはありません)

というわけで

会計事務所選びで重視しなくてはいけない2つ目のポイントは労働時間

(ちなみに、第一弾は、「離職率」でした。
税理士事務所・会計事務所の離職率」)

会計事務所の労働時間は、季節によって極端な差があります。
繁忙期 : 12月〜5月  年末調整、確定申告、3月決算
閑散期 : 6月〜11月

1.労働時間の一番短い会計事務所
高齢(60代以上)で、比較的少人数(10人以下)の穏やかな(個人差があります)税理士の事務所です。
  閑散期 : 9時〜5時
  繁忙期 : 9時〜6時過ぎ
そもそも正社員の定時が8時間労働ではなく、7時間労働で
給与が安いかというと、昔からの単価の高いお客様がいるのでそうでもありません。
税理士受験生には2〜3年なら理想的な労働環境かもしれません。
人間は、ないものねだりをするもので、仕事・刺激が少ないのが嫌で転職していくことも多いのですが。
(後継者がいなくてお客様が減っていると古い税務知識・技術のままというリスクはあります)
欠員補充の募集になるので、お客様が減少している現状では、あまり募集がなく、少数派になりつつあります。

2.普通の会計事務所
  閑散期 : 午前9時〜午後6時半〜7時半 
  繁忙期 : 午前9時〜午後7時から9時半くらい
閑散期はヒマなので、定時が終わると順次帰って、繁忙期は残業が普通だけれど、9時頃にはほとんど帰れる。
このタイプの事務所がほとんどです
会計事務所の労働時間は、
男性正社員は普通くらいですが、
時短勤務者、パート勤務者の比率が高いことが特徴です。

3.労働時間の長い会計事務所・税理士法人
  閑散期 : 午前8時半、9時〜午後9時過ぎ 
  繁忙期 : 午前8時半〜10時過ぎ・終電近く
閑散期から12時間近い労働時間で、繁忙期は休日出社も普通。
労働時間が長いので、疲れが抜けないし終電がなくなるとタクシーは高いので、職員は税理士法人の近くに家を借りたりすることも行われています。

成長率が高い税理士法人は、現場は人手不足になり、超過労働になって離職率も上がり、辞められても十分な引継ぎができないのでさらに現場の負荷が上がるという負のスパイラルに入ることもあります。

最近伸びている税理士法人は、労働時間が長くなりがちです。
飲食業界でワタミ、マクドナルド、そしてゼンショーがたたかれたのと一緒で、成長・伸びている法人の多くは過重労働で支えられていたりします。
会社が利益が上がっているか、伸びているかと、
そこで働く人が幸せかは全く別の話です。

最近では、税理士受験生の減少で競争が激しくなり、
採用広告で、受験・家庭との両立支援を打ち出す税理士法人、税理士事務所も増えていますが、あくまでも広告に過ぎないので、実際のところはどうかは別の問題です。
(マーケティングに優れた税理士法人の中には、問題があるところもあるように私は思います)
このため、広告ではなく事実から労働時間の長さを把握する必要があります。

長時間労働を見破る方法
 (1) 税理士が少ない
 税理士「受験生」・税理士事務所「未経験者」は比較的応募が多いですから、成長中で広告が上手な税理士法人なら採用が容易です。大量に採用した未経験者の中から残った人間で現場を回すことになります。
 それに対して「税理士」は、職場を選べる立場ですから、魅力のない職場には長居はしません。
 税理士が従業員数15人に一人以下なら疑った方が良いでしょう。

 税理士の数は、日税連のHPで確認できます。
「税理士 検索」でページを出して
https://www.zeirishikensaku.jp/sch/zs_sch0.asp
「条件を指定して検索したい場合」の「税理士」を選択
https://www.zeirishikensaku.jp/sch/zs_sch3.asp
「事務所名」に就職希望会計事務所を入れればすべて出てきます。
(なお、ここでは登録していないいわゆる「税理士有資格者」は検索できません
また、アルファベットは2パターンあり、TOTALはF9で入力してください)

 (2) 若手の比率が高すぎる・平均年齢が若すぎる
 従業員が100人近くになってくると、何らかの魅力があれば税理士の採用は容易になります。また、最大手級はだまっていてもいくらでも税理士が入ってきます(うらやましい)。このため税理士の数は多いのに、労働時間が長い税理士法人もみられます。税理士は比較的定着しますが、受験生や主婦は労働時間の長さについていけません。若手で補充するので事務所創立からある程度の年数がたっても従業員の平均年齢は30歳ちょっとだったりします。

「会社四季報」等を見ればわかりますが、平均年齢が若い(30歳ちょっと)企業はいわゆる問題企業が多く、普通の会社や優良企業は30代半ば〜40代半ば、持ち株会社・衰退企業は40歳半ば以上というのが一般的です。

 ちなみに税理士法人TOTALは、成長率が年率20〜30%くらいで、法人化して8年目(個人事業創立からだと15年)、税理士業界では税理士法人TOTALの成長率はかなり高い方に属しますが、それでも平均年齢はいつのまにか37歳くらいになりました。
ある程度の社歴があって平均年齢が30歳ちょっとだとしたら、成長率が高くても労働時間が長く、離職率が高いと疑う必要があります。

 (3) 残業代が出ない
 管理の煩雑さを避けるために、一定の時間数までの残業代を定額で支給するみなし(見込み)残業制を採用している会計事務所が増えてきました。もちろん、みなし残業でも規定残業時間(月20〜40時間等)を超過した分は精算が必要です。繁忙期などは(閑散期でも?)超えることもあるでしょうが、きちんと残業代を精算していない会計事務所もあるようです。
残業手当について無頓着な事務所や、みなし残業手当の精算がいい加減な事務所は、残業手当をきちんと払っている事務所に比べると長時間労働の可能性がやや高いでしょう。

なお、残業は自己申請が必要という形式で、残業を事実上申請させないという会計事務所も存在します。
これは
「タイムカードはありますか?」
「労働時間の管理方法はどうなっていますか?」
という質問をすることにより見破ることができます。
残業の多さが疑われる事務所の場合は聞いてみてください。

 (4) 正社員の主婦が少ない
 女性がパートばかりで正社員は少ない税理士事務所は、労働時間が長い可能性が高いです。
主婦なのに、終電近くまで働き、妊娠中でも7時までは連日普通に働くという事務所もあります。出産は大事な命に係わり、取り返しのつきません。そんな職場は辞めることになります。
労働時間の長さは不妊になったりや流産になりやすくなる危険性も増します。

 (5) 税理士受験生、合格者がいない・少ない
最近では、税理士試験受験生が減少しているため、人不足が深刻です。
このため「受験生支援」を謳う会計事務所が増えています。
残念ながら、実際には両立ができる事務所は多くありません。
採用のページは広告に過ぎません。
「残業ゼロ」、「受験応援します!」は単なるお題目かもしれません。
どのくらい両立が可能なのか、一番分かりやすいのは、科目合格者の人数です。
「去年の科目合格者は何人ですか?」に加えて
「税理士受験生は何人くらいおられますか?」
と聞けば、合格率もわかります。
面接の際は聞いてみてください。
受験仲間は多い方がモチベーションが続きます。受験と仕事の両立の度合いがはかれます。
似たような質問では
「過去に官報合格者は何人輩出されていますか?」
というものもありますが、
小規模や歴史の浅い税理士事務所では誤差が大きくなります。

====================
 税理士法人TOTALは、平成23年4名(他に退職した元従業員も2名)、平成24年1名、平成25年3名、平成26年2名、平成27年2名の最終合格者を輩出しました(科目合格も多数)。
今年も、一人でも多くの官報合格者が出てほしいものです。
====================

面接等で、会計事務所の労働時間を聞く際は、
「勤務時間はどれくらいですか?」という会話では
求職者は、<繁忙期>を念頭に質問しますが、悪意はなくても
所長は、<閑散期>を基準に回答するということが起きます。
「お忙しい時期と、暇な時期の勤務時間はそれぞれ何時から何時くらいですか?」
(「何時間ですか」と聞くと休み時間を除くかどうかでずれます)
など繁忙期と閑散期を分けてお聞きするといいでしょう。

最近は、最大手、若手成長中・中堅事務所の税理士法人など、税理士法人TOTALと同じかやや大きい税理士法人からの転職の応募が目立ちます。
 ・(受験生支援をうたう)他法人在職中の受験生に
  7月半ば(試験前の閑散期)午後7時半に
  電話したら、まだ仕事中、終わるのは10時過ぎ
 ・小さいお子さんが二人いるのに恒常的な残業
 ・そもそも閑散期がなくて年中きびしい
などなど、転職希望の理由の多くが、労働時間が長すぎてというものです。

過労死になりやすいのは、単月で残業時間が100時間を超える場合、2〜6か月なら月間平均80時間以上残業とされています(厚生労働省)。
http://kokoro.mhlw.go.jp/brochure/worker/files/H22_kajuu_kani.pdf


これ以上の長時間労働は危険です。心身ともに傷みます。
体調と相談して転職を本気で考えた方が良いかもしれません。
残業時間を計算する際は、会計事務所によっては定刻(午前9時等)前の時間を労働と認めないとか、夕食休憩をとったことにするとか、夜1時間休んだ扱いにするとか特殊な処理がされていることがあるので(もちろん違法です)、これらを控除する前の実労働時間で計算してみてください。

なお、税理士法人TOTALの労働時間は、
基本的には上記 2.普通の会計事務所 くらいの労働時間です。
ただ、子育て中の主婦は時短勤務も出来ますし、正社員でも平日は6時前後に帰り、その分、繁忙期は週末に出社してくれたりします。
一方、パートナーのうち2名は一年を通じて結構遅くまで働いてくれています。
(ちょっと働きすぎが心配です)
月80時間以上の残業の労働者は繁忙期でもほぼありません。
数年前まで、年1〜2名だけ80時間を超えた方がいました(それぞれ連続しない2か月ずつ)

最近は、中堅以上の税理士法人は労働力不足が慢性化しています。
税理士法人TOTALのとある本部のビルは、別の中堅会計事務所と同居していますが、うちの最後のスタッフの退社時にそちらの事務所は必ずまだ誰か人がいるそうです。お疲れ様です。

ちなみに、仕事終了後に半強制の飲み会が毎週のようにあったり、週末に遊びのイベントが多い「熱い会計事務所」もあります。
これらは労働時間には入りませんが、拘束時間は長くなります。
働く人の一体感を生み出す上では良いのですが、試験勉強には残念ながらマイナスでしょう。

===================
税理士法人TOTALが比較的成長率が高いにもかかわらず、労働時間が普通なのは、労働時間を長くして辞められると困るからです。特に船橋塚田本部は、立地に恵まれず、欠員補充が簡単にはできません。
また、私自身、根性も体力もないので、連日12時間以上働くと生産性が落ちます。疲れますよ。
自分が嫌なこと、無理なことを従業員に強要できません。
労働時間が短い方が良いというつもりはありません。20代後半の会計事務所未経験の男性官報合格者には、会計事務所経験のなさを早く補うため、毎日遅くまで働いてもらっています。
税理士の独身男性には、「もっとがんばろうよ」と言ったりします。
しっかり稼ぐべき人、今頑張って経験を積むべき人には長めに働いてもらいます。
一人一人に、その人にとって適切な労働時間で働いてもらいたいと思っています。
===================

大企業(金融・ITを含む)は、コンプライアンス重視で、飲食・小売等を除くと、昔に比べてだいぶ、異常な残業は減ってきている様な気がします。
(もっとも、朝型になっているだけで、8時前出社、8時過ぎ退社くらいですから、実態は月70時間程度の残業が普通ですから大企業も楽ではありません)
税理士業界は、最大手でも1000人いない零細・中小事業所しかない業界ですが、給与が大企業ほど高くない以上、魅力的な業界になるように今後は適切な労働時間にしていく必要があるように思います。

採用広告ではなく、経営の中身で勝負する健全な税理士業界へと発展させていきたいものです。



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コメント一覧

2. Posted by 税理士ひさ   2013年09月12日 21:35
真様
コメントありがとうございます。

毎日13時間労働が本当なら
残業は月間100時間、恒常的・継続的なら労災認定を受けられるレベルになります。

頭脳も肉体も疲れるでしょう。
過労死しないように注意してくださいね。

追加で人を採用してもらうのが一番いいと思いますが、しばらくたっても意見が聞き入れられないなら体調がこわれないうちに次の職場を考えた方がいいかもしれません。
1. Posted by 真   2013年09月11日 22:28
5 今、税理士法人で働いているものです。
今回、読ませていただいて、やはりうちの事務所は長時間労働タイプだと確信しました。

閑散期といわれる時期がなく、社員の皆も疲弊し切っています。
うちの事務所は朝も特別早く、毎日13時間近く働いているのを見て、新人ながら環境を変えなくてはと思う日々です。

一日あたり2時間は早く帰りたいと思いますが、今は人材不足かなと諦めてしまっています。

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